佐吉の葬式が済んで二日たった。常に呼び出されて、新太郎は万造とふたり、常の待つ凌雲院に向かっていた。打ち沈んだ雰囲気で、二人並んで空を仰ぐ。
「…それにしても、常さんは二重にお気の毒でございますねぇ」
万造の言葉に、新太郎はうなずいた。
「そうだとも。直さんや佐吉の供養のためにも、なんとしてもこの事件は解決しなくてはいけないと思うんだよ。そうだろう、万造君」
「――解決、致しましたよ」
万造の静かな声が割って入った。
「――え?」
「解決した、と申し上げました。犯人は常さんと直さん、常さんは――、私の仲間に」
「何を言って――」
そう言ってやった目線の先にいるのは、いつもと同じ万造、そのはず。だが、もしそうなら、彼のまわりにある黒い空間はいったいなんだろう。彼のかたわらに置いてある二つの人形は――。その片方が常の面影を宿しているのはいったい――。
「平河さん、起きてよ」
突然、無邪気な子どもの声がして新太郎は飛び起きた。
「はいっ」
「舟のうえで寝ないでよ」
しばらく考えて、この子どもが鷹司家の煕だということに思い至った。
「すみません。ついうとうとと」
夢だったのだ。万造の夢を見たのははじめてだったが。
「東亰には何回もきてるけど、この霧はやっぱりすごいんだなぁ」
煕はことし15になる。輔に似てきたようだが、中身はまだ幼い。
「そうですね」
新太郎は少し先の霧の中に目をやった。闇と霧の奥深くに居るかも知れぬ、かつての友人を探して――。
平河さんは、万造さんのこと忘れられないんだろうなあと、切なくなりました。不憫な人だ・・・・゚・(ノД`)。東亰読み直してみると、万造さんって酷い人ですねえ。でも好きだ!笑
きいろ様、素敵な作品を本当に有難う御座いました。【イバラノ】